10mWで7km届いた TS02EJ mdm3 LDM3タイプ
東京大学航空宇宙工学専攻 中須賀研究室は、ARLISSという、世界各国の大学生が参加する缶サイズの人工衛星をロケットで打ち上げ、様々な実験を行うプロジェクトに参加しています。
今回の実験は中須賀研究室が行ったもので、当社の429MHz帯特定小電力無線モジュール TS02EJ mdm3 LDM3が人工衛星と地上間のデータ通信用無線モジュールとして使用できるかの性能評価試験です。
以下の内容は実験結果を技術資料として当社でまとめたものです。
測定地点の選定
今回の試験は人工衛星と地上間の通信システム構築の一環で、ARLISS 2011での通信確認が目的です。実験目的で探したところ東京湾に浮かぶ人工島、海ほたるを見つけました。また結果を幅広く得るために別の地点として、東京湾に突き出した袖ヶ浦海浜公園を選定しました。この両地点とアクアブリッジ横の堀船溜での通信状況を調査します。
両地点の位置関係を図1に、袖ヶ浦海浜公園の展望塔から海ほたる方面を見ると写真1のような様子です。
図1 各測定地点の位置関係
写真1 袖ヶ浦海浜公園から海ほたる方面を見た様子
(海ほたるから左にアクアブリッジが続き、堀船溜に至る)。
実験方法と結果
主な実験方法は次の通りです。
・ 通信は送信/受信を相互に複数回行い、受信回数をカウントする。
・ 受信時にはRSSI(受信信号強度)値も記録する。
・ モジュールはホイップアンテナ(TS02EJ-S)タイプを使用。
・ 無線モジュールは人が手で持って掲げた状態でアンテナ高さは約2m、
・ 衛星搭載時と同じようにアンテナは鉛直下向き、対向側は鉛直上向きとする。
・ 海ほたるの高度を計測すると30m、袖ヶ浦海浜公園は17mであった。
各測定地点間での測定値を集計すると表1のような結果になりました。
測定地点 |
距離 (km) |
拠点側(ID:0296) |
対向側(ID:0297) |
||||
受送信数 (受信率) |
RSSI min. |
RSSI max. |
受送信数 (受信率) |
RSSI min. |
RSSI max. |
||
海ほたる ~ 袖ヶ浦海浜公園 |
7.0 |
5/5 (100%) |
0x45 |
0x54 |
8/10 (80.0%) |
0x39 |
0x5e |
海ほたる ~ 堀船溜 |
4.6 |
5/6 (83.3%) |
0x26 |
0x38 |
4/5 (80.0%) |
0x1e |
0x2d |
袖ヶ浦海浜公園 ~ 堀船溜 |
3.5 |
4/5 (80.0%) |
0x49 |
0x52 |
5/5 (100%) |
0x3c |
0x4b |
実験結果より
結果は、海ほたる~袖ヶ浦海浜公園間において、10mW(0.01W)でも見通し距離7kmでの通信に成功しました。
今回の実験結果より、TS02EJシリーズの低電圧動作・低消費電力を活かし、ローカルな太陽電池や風力発電などとバッテリを組み合わせたオフライン電源を使用して遠隔地からのデータ通信などにご活用いただけるものと思います。
遠距離通信を実現するには、次のことがポイントになります。
・高さはなるべく高くする。
・アンテナの偏波面を合わせる。
・アンテナの放射パターンにも留意する。
・周囲の人体や物体による影響を考慮する。